妊娠中に親知らずに苦しんだらどうするのか

 妊娠中は身体に変化が生じるものです。これはホルモンバランスが通常のときから変わるからだとか、いわゆるマタニティブルーが肉体的にも影響を及ぼすからだと言われていますが、当事者からすれば苦しいのは一緒だとのことです。
 私の知人に、その妊娠中に親知らずが痛み出し、苦しんだ人がいます。今回はその話を紹介します。

 彼女が口の中に生じた違和感に気づいたのは、ようやくつわりが終わろうとしていたときでした。奥の方にある親知らずが激しく痛み出したのです。
 これは辛抱できないと感じた彼女は、即座に歯医者に駆け込みました。過去に親知らずを抜歯した経験があるため、今回もそれで乗り切ろうと考えたのです。
 しかし、その申し出は歯医者の方から拒絶されました。
 妊娠中の女性に抜歯を行うと、切迫流産をする恐れがあるので、承諾できないと言われたのです。
 そんな話は聞いたことがなかった彼女は、ではどうすればよいのかと訊ねました。これでは痛みのせいで、家事や食事もおぼつかないのです。
 歯医者は洗浄や消毒、鎮痛剤の処方を勧めました。抜歯は健康体の人間でもときに体調を悪化させるものであるため、妊娠中はそれで誤魔化し、出産後に本格的な治療を始めようというプランです。
 痛みは酷いが、胎児に犠牲を強いる訳にはいかないと考えた彼女は、それを承諾しました。そしてそれからの数ヶ月は、苦痛に満ちていたと言います。
 親知らずを引き抜きさえすれば解決するのに、それを薬で誤魔化し続けるとなると、かなりストレスがたまります。
 彼女は生まれてくる我が子の顔を無事に見たいという母性と同時に、うっとうしくてたまらない存在とは早く縁を切りたいとの気持ちで出産予定日を待ちわびました。
 そして無事に出産を終え、医師から通常の生活に復帰してよいとの許しを得ると、彼女はその足で歯医者に向かい、やっかいものと別れることができたのです。
 もうこんな体験は二度としたくないと彼女は言いますが、聞いているうちに口の中が気になりだした私は、ただ頷くしかできませんでした。